Fukaseの表現に宿る抜きん出た哀愁と強烈な肯定感は、彼がかつて経験した過酷な生い立ちに根差しています。華やかなステージの裏には、10代から20代前半にかけて味わった深い精神的暗闇がありました。
高校を中退した後、アメリカへの留学を決意したものの、現地で重度のパニック障害を発症。わずか2週間で帰国を余儀なくされ、その後は精神科の閉鎖病棟への入院を経験しました。強い抗不安薬の副作用によって記憶が曖昧になり、自分が学んできたことやアイデンティティが崩壊していく感覚を味わったといいます。当時の絶望的な心境について、彼は後のドキュメンタリー番組や手記で「すべてを失い、世界が終わったと思った」と振り返っています。
しかし、彼はそのどん底から立ち上がりました。精神医学やカウンセラーを目指して猛勉強を重ねるも、薬の副作用による記憶障害から挫折。そのとき、「自分にはもう音楽と仲間しか残されていない」と悟り、幼馴染のNakajinらに声をかけて結成したのが「世界の終わり(現SEKAI NO OWARI)」でした。
象徴的なのが、彼らの原点である手作りのライブハウス「club EARTH」の設立経緯です。東京都大田区の印刷工場跡地を借り受け、多額の借金を背負いながら、メンバー自らコンクリートを打ち、防音壁を張り、朝から晩まで作業を続けました。共同生活を送りながら泥だらけになって作ったその地下室から、日本を代表するロックバンドの歴史がスタートしたのです。