スクリーン上ではどこまでも自然で眩しい笑顔を見せていた三浦春馬さんですが、その舞台裏には並々ならぬプレッシャーと孤独な格闘が存在していました。当時の映画特番やメイキングインタビューにおいて、三浦さんは「風早は爽やかすぎて、自分の中に彼のような要素があるのだろうかと不安だった」「笑顔を作るだけで精一杯になってしまう瞬間があった」と率直な胸の内を吐露しています。
当時弱冠20歳。すでに数々のドラマや映画で主演を務め、若手実力派としての名声を確立しつつあった三浦さんにとって、「誰もが憧れる爽やかな象徴」を演じることは、自身の内面を極限まで削り出す作業でもありました。撮影現場では監督の熊澤誓人氏と何度もディスカッションを重ね、ただ明るく振る舞うのではなく、「なぜ風早は爽子の孤独に気づくことができたのか」という内面的な動機の掘り下げに時間を費やしたと伝えられています。
その重圧を支え、奇跡的なケミストリーを生み出す原動力となったのが、ヒロイン・黒沼爽子を演じた多部未華子さんの存在でした。三浦さんと多部さんは、本作の以前から互いの才能を認め合い、後に複数の作品でも共演を果たす名コンビとなりますが、撮影当時の現場では過剰に馴れ合うことなく、役柄と同様に少しずつ心の距離を縮めていく独特の空気感を共有していました。多部さんが放つ唯一無二の透明感と凛とした佇まいがあったからこそ、三浦さんもまた嘘のない自然なリアクションを引き出され、あの歴史に残る名シーンの数々が誕生したのです。
また、本作を語る上で欠かせないのが、栃木県足利市などを中心に敢行された丁寧なロケーション撮影です。旧足利西高校をはじめとする風光明媚な撮影現場では、四季の移ろいと青春の痛痒がフィルムに焼き付けられました。地元エキストラや撮影スタッフの証言によると、撮影合間の三浦さんは共演の三浦翔平さんや蓮佛美沙子さんらと和やかに談笑しつつも、近隣の住民やスタッフへ深く頭を下げて挨拶を欠かさない誠実な人柄そのものであったと語られています。