2ちゃんねる全盛期、掲示板上の書き込みによる名誉毀損やプライバシー侵害を理由に、ひろゆき氏は無数の民事訴訟を起こされました。その多くで敗訴し、確定した賠償額の総額は約30億円に達したと報じられています。
しかし、彼は公の場で「賠償金は払わない」と公言し続けました。これが成立した背景には、当時の日本の民事執行法が抱えていた構造的欠陥が存在します。
民事裁判で勝訴判決を得ても、裁判所が自動的に相手の口座から現金を回収してくれるわけではありません。債権者(被害者側)が債務者(ひろゆき氏)の預金口座番号や保有不動産を自力で特定し、差し押さえを申し立てる必要がありました。しかし、ひろゆき氏は個人名義で不動産を持たず、口座情報も厳格に管理していたため、強制執行が極めて困難だったのです。
さらに、日本の民法では確定判決による債権の消滅時効は10年間と定められています。債権者が10年の間に有効な差し押さえや時効更新措置を講じなければ、支払い義務は法的に消滅します。一部の出版社から差し押さえられた書籍印税などを除き、大半の債権は時効を迎えたとされています。なお、2020年に改正民事執行法が施行され、財産開示手続に刑事罰が導入されるなど不払いへの締め付けは大幅に強化されましたが、ひろゆき氏の過去の事案の多くはそれ以前に法的整理がついた形となっています。