長野県松本市安曇、北アルプスの主峰群を間近に望む安房峠の中腹に位置する「中の湯温泉旅館」は、創業大正初期という長い歴史を誇る山峡の宿です。かつては現在の安房トンネル坑口付近に位置していましたが、1995年の安房トンネル工事に伴う水蒸気爆発事故を経て、1998年に現在の高台へと移転・再建された経緯を持ちます。この移転により、眼下に梓川の渓谷、正面に雄大な霞沢岳と北アルプスの山並みを望む屈指のパノラマロケーションを手に入れました。
全国の良質な温泉宿が名を連ねる「日本秘湯を守る会」の会員宿としても知られ、館内には木の温もりを生かした山岳ロッジ風の落ち着いた空間が広がります。館主やスタッフの細やかな山岳案内、郷土色豊かな料理へのこだわりは、単なる宿泊施設にとどまらない温かみを提供しています。
中の湯温泉がこれほどまでに登山愛好家を惹きつける最大の要因は、北アルプス唯一の活火山である焼岳(標高2,455メートル)への最短ルート「中の湯ルート」の登山口至近に位置している点です。下山直後に良質な天然温泉で疲労を回復できる環境は、アルピニストにとって至高の贅沢であり、上高地散策の前泊・後泊地としても年間を通じて安定した需要を誇っています。