ドラマのクライマックスで視聴者を釘付けにする「涙を流す飼い主の手をそっと舐めるシーン」や「危険を察知して激しく吠え立てる場面」。こうした犬ドラマ感動シーンの真相について、インターネット上では「無理やり目薬を差しているのではないか」「怯えさせて吠えさせているのでは」といった懸念や憶測が散見されます。しかし、現場取材で明らかになった事実は、そうしたネガティブな想像とは正反対のものです。
第一線のトレーナーによると、犬が人間の顔や手を舐める行為は、緊張をほぐすための親愛のサイン、あるいは特定のご褒美フレーバーを活用したポジティブ・トレーニングの成果です。怒ったり威嚇したりして吠えるシーンでも、犬自身は「指定の合図で声を出すと大好きなおもちゃで遊んでもらえる」という、ゲーム感覚のポジティブな興奮状態で演じています。恐怖や苦痛を与えて演技をさせる手法は、犬の表情を硬直させ、生き生きとした目の輝きを奪ってしまうため、プロの映像制作では完全にタブーとされています。
この「犬本来の自然体を引き出す」という手法で熱狂的な支持を集めた好例が、2019年にドラマおよび映画で展開された『柴公園』です。公園のベンチで中年男性たちが柴犬自慢を繰り広げるこの作品では、登場する柴犬たち(あたる、じっちゃん、さちこ等)のキャスティングにおいて、過度な芸当よりも「柴犬特有のマイペースさ」「頑固な座り込み」といったリアルな習性が重視されました。作中で見せる愛嬌ある脱力感は、徹底してストレスを排除した環境でカメラを回し続けた撮影スタッフの根気強い観察眼が生み出したものです。