寿司食べ放題において「元を取る」という言葉は、店舗側の販売価格に対して客が食べたネタの定価換算額が上回るケースと、原材料の仕入れ原価が支払額を上回るケースの2通りに分かれます。外食業界関係者へのヒアリングによると、一般的な寿司チェーンの通常営業時における原価率は約30%〜38%ですが、食べ放題専門店や高級寿司食べ放題コースでは、客の注文動向によって45%〜55%近くまで跳ね上がるケースが珍しくありません。
店舗が赤字になる理由は極めてシンプルで、客が高単価なネタだけを集中的に注文することです。一貫あたりの仕入れ原価はネタの種類によって歴然とした差が存在します。
例えば、国産本マグロの中トロや生ウニ、天然アワビ、イクラなどの高級ネタは、近年の水産物輸入制限や漁獲枠の影響もあり、一貫あたりの仕入れ原価だけで150円〜250円前後に達します。一方で、玉子、カッパ巻き、ツナマヨなどの低原価ネタは10円〜25円程度に過ぎません。5,000円の食べ放題コースにおいて、原価200円のウニや中トロを25貫食べられた場合、仕入れ原価だけで5,000円に到達し、人件費や光熱費を含めれば店舗側は完全な赤字へと転落します。
それでも店舗が倒産せずに営業を続けられる背景には、3つの構造的なカラクリがあります。第1に、グループ客の中に必ず混ざる「少食な利用者」や「玉子・サーモン・フライドポテトを頼む子ども・若年層」による原価率の平準化です。第2に、粗利率が80%を超えるアルコール・ソフトドリンクの売上による利益補填。第3に、一定時間内に大量のネタを回転させることによる一括大量仕入れでのコスト圧縮と、通常営業に比べて見切りロス(廃棄処分)がほぼゼロに近いという点です。