暗黒武術会準決勝において、浦飯チームの前に立ちはだかった「裏御伽チーム」。日本の昔話をモチーフにした奇怪な妖怪集団の頂点に君臨していたのが、表向きは怪老人の怨爺として身を潜めていた裏御伽チーム リーダー、美しい魔闘家鈴木です。
桑原を一撃で武術会会場外へと転送した「死出の羽衣」など、底知れない不気味さを放っていた怨爺でしたが、幻海との一騎討ちを迎えた瞬間にその皮を脱ぎ捨てます。現れたのは、白塗りのピエロメイクにフリル付きの道化衣装をまとった青年でした。かつては「強い妖戦士田中」という身も蓋もないニックネームを名乗っていた事実を明かしつつ、「千の姿と千の技を持つ」と自負するその姿は、観客席の妖怪のみならず当時の読者の度肝を抜きました。
テレビアニメ版において美しい魔闘家鈴木の声優を担当したのは、端正な二枚目から狂気的な悪役まで圧倒的な表現力を誇った故・曽我部和恭氏(少年時代:田野めぐみ氏)です。曽我部氏の艶と気品を含んだ怪演が、鈴木の過剰な自意識とどこか憎めない滑稽さを完璧に昇華させ、キャラクターの存在感を不動のものとしました。
鈴木のキャラクターを語る上で欠かせないのが、漫画史に残る強烈な美しい魔闘家鈴木 名言です。
「私のことを人にしゃべるとき 名前の前に 美しい という言葉をつけるのを忘れるな」
このセリフに象徴される通り、彼の行動原理の根底には「自己の存在を特別視させたい」という肥大化した承認欲求がありました。しかし、幻海から放たれた「技自体に愛や重みがない」「見かけ倒しの薄っぺらい技」という痛烈な指摘と、容赦ない鉄拳制裁によって、そのプライドは無残にも粉砕されることになります。