日本発のツーシームが世界の頂点で通用することを証明した先駆者といえば、元広島東洋カープ・ニューヨーク・ヤンキースの黒田博樹投手に他なりません。黒田氏の代名詞となったのが、右打者の胸元へボールゾーンからストライクゾーンへと鋭く曲がり込ませる「フロントドア」、そして左打者の外角ボールゾーンからバックドアでストライクを奪う神業のような投球術でした。屈強なメジャーのスラッガーたちがバットを引いて見逃し三振に倒れる姿は、日米のファンに強烈な衝撃を与えました。
そして、ピッチデザインのパイオニアであるダルビッシュ有投手もまた、ツーシームを進化させ続けている一人です。ダルビッシュ投手は球速150km/h台中盤のシンカー(ツーシーム)をベースにしながら、縫い目にかける指の位置や力加減をミリ単位で調整し、「より横へ滑るタイプ」「真下へ鋭く落ちるタイプ」など、対戦打者の弱点に合わせて変化の成分を自在にカスタマイズしています。
近年のメジャーリーグでのツーシーム事情を俯瞰すると、興味深いトレンドが見えてきます。一時期は「投手の肩肘を守り、少ない球数でアウトを取れる効率的な球種」として全盛を極めましたが、打者側のフライボール革命やデータ解析の進展により、低めのツーシームを一網打尽にすくい上げるアッパースイングが定着。一時は投球割合が減少する局面もありました。しかし現在では、高めのフォーシームや外へ大きく曲がるスイーパーの台頭により、それらのボールと対角線上で錯覚を生み出す「インハイへのハードツーシーム」や「対アッパースイング用のアングル」として再評価され、再び必須の武器として君臨しています。