チュロスやチュリトスを手にしたとき、誰もが目にするのがギザギザとした星型の断面です。この独特な形状は、単なる見た目の可愛らしさや砂糖を絡みやすくするための工夫だけではありません。調理時の重大な事故を防ぐ「物理学的な必然性」によって生み出された形状です。
チュロスの生地は、小麦粉に熱湯を加えて激しく練り上げる「湯練り」の製法が基本となります。これにより生地内のデンプンが強力に糊化(アルファ化)し、水分を内部に閉じ込めた高密度のグルテンネットワークが形成されます。もしこの生地を断面が真円(丸型)の口金で絞り出して油で揚げた場合、表面が先に硬化してしまい、内部に閉じ込められた水分が沸騰して気化する逃げ場を失ってしまいます。
その結果、内部の水蒸気圧が限界に達した瞬間に生地が油の中で大爆発を起こし、高温の揚げ油が周囲に激しく飛散するという惨事につながります。家庭で手作りチュロスを作る際に丸口金を使用して重傷を負う事故は、国民生活センター等でも定期的に注意喚起がなされています。星型の口金から絞り出すことで、表面積を円形に比べて約1.5倍以上に広げ、熱を均等に通しながら蒸気を効率よく逃がす安全弁の役割を果たしているのです。