三浦孝太というアスリートを語る上で欠かせないのが、タイ国内で巻き起こった空前絶後の社会現象です。その発火点となったのが、2022年8月にムエタイの聖地ラジャダムナン・スタジアムで行われた、伝説の王者ブアカーオ・バンチャメークとのエキシビションマッチでした。
圧倒的な実力差があることは戦前から明白であり、結果もブアカーオの膝蹴りとパンチの連打を浴びて3R レフェリーストップによるTKO負け。しかし、顔面を腫らしながらも最後まで決してギブアップせず、真っ直ぐに王者を睨み返した三浦の姿は、タイの観客に凄まじい衝撃を与えました。
現地メディアの特番インタビューにおいて、三浦は試合後に「怖かったけれど、逃げたら今まで応援してくれた人たちや父の名前を汚すことになると思った」と涙ながらに吐露しています。このひたむきな姿勢が、タイの若年層、とりわけ女性ファン層の心を強烈に揺さぶりました。
さらに、東南アジア圏において絶大な支持を集める「K-POPスターや日本のアニメ主人公を彷彿とさせる端正なルックス」と、「過酷な格闘技に身を投じるストイックさ」という強烈なギャップが合致。タイの国際空港には数千人規模のファンが押し寄せ、現地での大手清涼飲料水やファッションブランドのアンバサダー契約へと発展しました。格闘技ファン以外の巨大なライト層を巻き込んだこのムーブメントは、単なるスポーツの枠を超えたカルチャー現象と呼ぶにふさわしい熱量を持っています。