この劇場の背骨にあるのは、1919年創刊という世界屈指の歴史を誇る映画雑誌を抱える株式会社キネマ旬報社の知見そのものだ。毎年恒例の「キネマ旬報ベスト・テン」は、批評家や映画人が威信をかけて選出する日本映画界最高峰の指標として知られる。その審美眼がそのまま3つのスクリーンに注ぎ込まれているのだから、映画ファンにとって堪らない空間になるのは必然と言っていい。
大手シネコンでは興行的な採算が合わないと見送られがちなインディペンデント作品や、歴史に埋もれかけた珠玉の旧作。そうしたフィルムに惜しみなく光を当て続けるキュレーションの妙は、全国のミニシアターカルチャーを牽引してきた自負から生まれている。ロビーの壁面を彩る歴代ポスターや貴重なアーカイブ展示を眺めているだけで、上映前の時間はあっという間に溶けていく。