坑道を出ると、目の前には皆河川の澄み切ったせせらぎが広がっている。眩しい木漏れ日。緑の匂い。肌を冷ます山風。地底の完全な暗がりと沈黙を経験したあとの世界は、驚くほど鮮やかに目に映る。
観光地によくある派手なアトラクションや、洗練されたカフェメニューなどはここにはない。あるのは、川のせせらぎと鳥の声、そして素朴な休憩棟だけだ。足し算ばかりを繰り返してきた都市生活に対する、徹底的な引き算。視界を遮る高層ビルもなく、頭上にはどこまでも深い兵庫の空が抜けている。自然の中に「放り出される」ことの心地よさを、忘れていた身体が思い出す。