ハローキティのデザインにおいて、長年もっとも多くの議論を呼んできたのが「口が描かれていない理由」です。サンリオ公式や3代目デザイナーの山口裕子氏が明かしている公式見解、および心理学的な分析から、その本質的な意図が浮き彫りになっています。
ハローキティに口がない決定的な理由は、「見る人に自分の感情を投影してもらうため」です。もしキティちゃんに満面の笑みが描かれていれば、深く落ち込んでいる人はその明るさに疎外感を抱くかもしれません。逆に悲しい表情をしていれば、喜びに満ちた人を困惑させてしまいます。口元を意図的に空白にしておくことで、見る人が嬉しいときは一緒に笑っているように見え、悲しいときは静かに寄り添ってくれているように感じられる「感情の鏡」としての役割を果たしているのです。
心理学ではこれを「投影同一視」や「感情移入の受容空間」と解釈できます。言葉(口)で自己主張するのではなく、心と心の対話(テレパシーのような共感)を交わす設計になっている点が、世界中のあらゆる文化圏で摩擦なく受け入れられた最大の要因です。押しつけがましさの一切ない優しさが、ファンに深い安心感を与えています。