パークの壮大な安全神話を内側から崩壊させたのは、獰猛な肉食恐竜たちではありませんでした。直接の引き金となったのは、たった一人の不満分子による人為的なサボタージュです。
チーフ・プログラマーのデニス・ネドリーは、パークの複雑怪奇なオートメーションシステムを実質的に一人で設計・管理していました。しかし、創業者ハモンドとの契約金をめぐる激しい対立や、過重労働に対する正当な評価の欠如が彼を金銭的困窮と不満の極限へと追い込みます。ライバル企業であるインバイオ社への胚持ち出しを目論み、セキュリティシステムを一時的にシャットダウンした行動が、すべての悲劇の幕を開けました。
暴風雨の夜、ディロフォサウルスの鳴き声に怯えながら自らの愚行の報いを受けるネドリーの凄惨な死は、「システムの脆弱性は常に技術ではなく人間に宿る」というセキュリティ工学の鉄則を象徴しています。
そしてもう一人、シリーズ全体を通じて最も劇的な変貌を遂げたのが主任遺伝子学者のヘンリー・ウー博士です。
映画第1作では、孵化場で卵を検分しながらグラントたちの質問に淡々と答えるだけの、ごく控えめな出番にとどまっていました。しかし、映画版で彼が島から無傷で脱出していた事実が、22年後の『ジュラシック・ワールド』(2015年)で巨大な伏線として回収されます。遺伝子組み換えによるハイブリッド恐竜「インドミナス・レックス」の開発主導者としてシリーズ最大の黒幕的存在へと昇格。生命の神秘を尊ぶ研究者から、神の領域に手を染めるマッドサイエンティストへと堕ちていくその軌跡は、第1作を起点とする最大の見どころの一つです。