作りたてのオムライスは柔らかくジューシーなのに、お昼のお弁当箱の中では「ゴムのように固く、パサついた卵」に変わってしまう現象には、明確な調理科学の理由が存在します。卵の主成分であるオボアルブミンなどのタンパク質は、加熱によって網目構造を形成しながら固束します。加熱直後は内部に水分を抱え込んでいますが、時間の経過とともにタンパク質が収縮し、内部の自由水を外へ絞り出してしまうのです。
お弁当用として「時間が経っても冷めても美味しい食感」をキープするためには、タンパク質の過度な結合を物理的に阻害し、水分を保持し続ける構造を作らなければなりません。そこで決定的な役割を果たすのが、卵液へのマヨネーズと水溶き片栗粉の添加です。
日本調理科学会などの学術研究でも知られている通り、マヨネーズに含まれる微細な植物油の粒子(乳化された油滴)は、卵のタンパク質がガチガチに結合するのを物理的に邪魔するクッションの役割を果たします。さらに、片栗粉の保水力が加熱時に水分をゲル状に抱え込むため、完全に火を通した状態であっても、冷えた後にしっとりとした柔らかさが維持されるのです。
検証テストで導き出した、お弁当用卵液の黄金比率は以下の通りです。
- 卵:2個(M〜Lサイズ)
- マヨネーズ:小さじ1(油分と酸味がタンパク質の変性を和らげる)
- 牛乳(または水):大さじ1(適度な水分を補給)
- 水溶き片栗粉:片栗粉小さじ半分+水小さじ1(保水膜を形成し、破れにくさを向上)
- 塩・こしょう:少々
これらを白身のコシを断ち切るようにしっかりと混ぜ合わせ、目の細かい茶こし等で一度濾すだけで、舌触りのなめらかさと仕上がりの均一性が飛躍的に向上します。