笑気麻酔は、正式名称を笑気吸入鎮静法と呼びます。吸入に用いる「笑気ガス」の正体は亜酸化窒素(N2O)と呼ばれる無色でわずかに甘い芳香を持つ気体です。吸入すると顔の筋肉が弛緩し、まるで微笑んでいるような表情に見えることから、18世紀の発見当初に「笑気(Laughing Gas)」と命名された歴史を持ちます。
医療現場における安全性への配慮は極めて厳格です。臨床で使用される際は、亜酸化窒素30%以下・医療用酸素70%以上の高濃度酸素混合ガスとして専用の吸入装置から供給されます。人間が大気中で呼吸している酸素濃度(約21%)よりもはるかに高濃度の酸素を同時に吸入するため、低酸素症に陥るリスクは極めて低く抑えられています。
最大の特徴は、肺胞から血液中へ溶け込みにくく、速やかに脳へと作用する一方で、吸入を止めれば数分以内に肺からそのまま体外へ排出される点です。肝臓や腎臓で代謝・分解される薬剤と異なり、臓器への負担がほとんどないため、小児歯科から高齢者の処置に至るまで幅広い現場で活用されています。