香川のご当地グルメとして讃岐うどんに並ぶツートップに君臨する骨付鳥。発祥は丸亀市の居酒屋「一鶴」ですが、県庁所在地であり四国の玄関口である高松市において、出張ビジネスマンの夜の活力源として、また地元住民の日常の宴席として独自の進化を遂げてきました。
その最大の魅力は、「塩、コショウ、ニンニク、鶏油(チーユ)」が織りなす極限までスパイシーかつ野性的な味付けにあります。表面は揚げるようにパリパリに焼き上げられ、手で骨をつかんで豪快にかぶりつくと、熱々の肉汁が口いっぱいに広がります。この強烈なパンチ力こそが、あっさりとした讃岐うどんを昼に食べた人々を、夜の酒場へと引きずり込む最大の要因です。
そして、注文時に誰もが直面する最大の分かれ道が「おやどり」と「ひなどり」の選択です。この2つは単なる年齢差にとどまらず、まったく別の料理と言っても過言ではないほどの違いがあります。
【おやどり(親鶏)の真価】
採卵を終えた成鶏肉を使用しており、繊維質が極めて強靭で強烈な弾力があります。初めて食べる人は「硬い!」と驚くほどですが、包丁で入れられた切れ目に沿ってハサミで切り分け、噛み締めれば噛み締めるほど、凝縮された濃厚なコクと深い旨味が染み出してきます。地元民や呑兵衛の間では「結局はおやどりに戻る」と熱狂的に支持される、通好みの逸品です。
【ひなどり(若鶏)の魅力】
生後数カ月の若鶏を使用しており、身がふっくらと柔らかく、非常にジューシーです。皮のパリッとした食感と肉の柔らかさのコントラストが素晴らしく、子どもから年配者まで誰もが手放しで「美味い」と絶賛できる王道の味わいです。骨付鳥ビギナーや、豪快にかぶりついてジューシーさを堪能したい方には間違いなくこちらが適しています。
さらに忘れてはならないのが、「骨付鳥とおにぎり」という独自の食べ方ルールです。骨付鳥を注文すると皿の底にスパイスと旨味が溶け出した黄金色の鶏油がたっぷり溜まります。ここに付け合わせの生キャベツを浸して食べるのは序の口。地元民の鉄則は、サイドメニューの「おにぎり(銀むすび)」を注文し、このスパイシーな脂に直接ダイブさせて米に吸わせる食べ方です。炭水化物と上質な脂が融合した背徳的な美味さは、高松の夜を締めくくる最高の儀式となっています。