世代を問わず多くの鑑賞者が息をのむのは、ガラスケース越しであっても伝わる人形たちの異様なまでの気迫です。1982年から放映されたNHK人形劇 三国志や、1993年放映の人形歴史スペクタクル 平家物語で使用された人形群は、単なるテレビの小道具という枠を遥かに凌駕した美術品として制作されました。
川本喜八郎氏が手掛けた人形の特徴は、感情の機微をわずかな角度の変化で表現する「生きた表情」にあります。桐の木を丹念に削り出し、繊細な胡粉塗りと彩色を施した頭部。さらに、眉や瞳、口元が微細に動くからくり仕掛けによって、喜びや怒り、深い哀愁といった人間ドラマの極限が表現されました。
CG映像に慣れ親しんだ現代の若いクリエイターやアニメファンにとっても、木と布とガラス玉で構築された実物の立体感は圧倒的です。「画面越しでは分からなかった衣装の刺繍の細かさや刃物の重厚感に震えた」という声が相次ぐのも頷けます。