政権末期の2020年8月、東京・信濃町の慶應義塾大学病院へと向かう車列は、日本中の注視を集めた。日曜日や早朝を利用した極秘の受診態勢が敷かれたものの、その頻度と滞在時間の長さは異変を隠しきれなかった。
当時、官房長官として政権の要を担っていた菅義偉氏は、最も近くでその限界を目撃していた一人だ。菅氏は後に、側近として首相の顔色の変化や食事の摂取量に細心の注意を払っていたことを明かしている。「国政に支障を来すことだけは避けたい」という決断の瞬間、二人の間には言葉を超えた緊張感が走った。慶應義塾大学病院での精密検査の結果が届いた夜、日本の政治史が再び大きく動くことが確定したのである。