1990年代初頭、ロックバンド「クイーン」のボーカルであるフレディ・マーキュリーが自身の病状を公表した直後にこの世を去った出来事は、世界の音楽界とファンに消えることのない衝撃を与えた。当時、HIVおよびエイズに対する偏見は苛烈であり、病に苦しむ多くの人々が孤立を余儀なくされていた。彼の死は、それまで目を背けがちだった社会全体に対し、感染症の猛威と向き合うよう強く迫る契機となったのだ。
後に彼の半生を描いた伝記映画ボヘミアン・ラプソディが世界中で大ヒットを記録したことは、新たな世代がこの問題に触れる大きなきっかけとなった。また、トム・ハンクスが主演を務めアカデミー賞を受賞した映画フィラデルフィアなど、80〜90年代の社会的な偏見と葛藤を描いた名作群は、偏見がいかに人間を傷つけるかをポップカルチャーの力で証明してみせた。