最新の取材と検証資料によって改めて浮かび上がる彼女の青春期は、まさに情熱の暴風雨そのものであった。見合い結婚によって中国へ渡り、平穏な生活を送っていたはずの彼女だが、帰国後に夫の教え子であった若者との道ならぬ恋に落ちる。周囲の猛反対や世間の苛烈なバッシングを顧みず、家庭を崩壊させてまで愛を選んだ決断は、当時の社会常識を大きく揺るがした。
しかし、彼女の愛憎劇はそれだけでは終わらない。上京後に本格的な執筆活動を開始すると、一筋縄ではいかない複数の男性との複雑な恋愛関係へと巻き込まれていく。愛することの悦びと同時に訪れる激しい嫉嫉、裏切り、そして自責の念。駆け持ち恋愛と称される破天荒な交友関係のなかで育まれた生々しい情動こそが、知られざる愛憎劇の真実であり、彼女の内に秘められた表現者としての情熱を爆発させる火種となったのだ。