メルカトル図法を目にした多くの人が違和感を抱く最大のポイントが、極地方に近づくほど陸地が異様に巨大化する「高緯度の拡大現象」です。
実際の地球上における地理データと、メルカトル図法上の見かけのサイズには以下のような圧倒的な乖離が存在します。
- グリーンランドの実際の面積:約216万6,000平方キロメートル
- アフリカ大陸の実際の面積:約3,037万平方キロメートル
客観的な数値データが示す通り、実際のアフリカ大陸はグリーンランドが約14個も収まる広大な面積を有しています。ところが、標準的な世界地図を開くと、両者はほぼ同等の巨大な陸地として描かれています。さらに、南米大陸(約1,784万平方キロメートル)とグリーンランドを比較しても、地図上ではグリーンランドの方が大きく見えてしまう逆転現象すら発生します。
この歪みが生じる幾何学的な理由は、「球体である地球を無理やり長方形の紙に投影しているから」に他なりません。
地球上の経線(子午線)は、赤道部分で最も間隔が広く、北極点・南極点に向かうにつれて1点に収束していきます。しかしメルカトル図法では、経線をすべて等間隔の平行な直線として描きます。この時点で、高緯度になればなるほど東西方向への引き伸ばしが発生します。
東西方向に引き伸ばされた比率と同じ割合で南北方向(緯線の間隔)も引き伸ばさなければ、現地の正確な「角度」や「形」を維持できません。その結果、緯度が高くなればなるほど東西・南北の双方向に掛け算式で拡大倍率が跳ね上がり、北緯・南緯60度付近では面積が実際の約4倍、北緯80度付近では約33倍にまで膨れ上がります。これが、グリーンランドがアフリカ大陸並みに見えてしまう視覚的トリックの数学的メカニズムです。