渋沢栄一の一万円札を手に取ると、見る角度によって肖像の向きが変わる最先端の3Dホログラムに目を奪われる。これは銀行券への採用としては世界初の試みだ。さらに、視覚障害者向けのユニバーサルデザインとして、触って判別できる凹凸印刷も大幅に強化された。
お札の肖像は、単なるイラストではない。国立印刷局の工芸官と呼ばれる専門の彫刻師が、何ヶ月もかけて金属板に極細の線や点を刻み込んでいく。この手作業による超微細な凹凸が、コピー機やデジタルスキャナーでは決して再現できない独特の質感を生み出している。私たちが何気なく使っている一万円札は、世界最高水準のアートピースでもあるのだ。