悲劇の発端となった別府市大学生死亡ひき逃げ事件は、平穏な観光都市を一瞬にして恐怖に陥れた。直前に発生した些細なトラブルから容疑者は執拗に被害者のバイクを追跡し、制限速度を大幅に超過した時速数十キロでノーブレーキのまま激突したとされる。衝突の衝撃で大破した車両を放置した八田容疑者は、靴を脱ぎ捨てて裸足のまま現場から北東の方向、別府湾沿いの住宅街や山手方面へと全力で疾走した。
事件直後の防犯カメラには、道路を猛然と走り去る男の姿が記録されていた。しかし、別府市街の繁華街手前でその痕跡はプツリと途絶える。海沿いを通る国道を北上したのか、ヨットハーバー周辺に潜伏したのか、あるいは事前に用意していた協力者の車に乗り換えたのか。初動捜査における足取りの空白地帯について、逃走ルートの再検証が幾度となく繰り返されている。