「幸福の国」の知られざる真実を紐解く上で、今最も注目すべきは観光政策の大胆なシフトだ。かつて「高付加価値・低負荷」を掲げ、1日あたりの定額観光料金を設定していたブータン政府は、パンデミック以降、持続可能な開発手数料(SDF)の仕組みを大きく刷新した。
2026年に向けた中期計画において、ブータンは単なる観光客数の回復を目指してはいない。高額なSDFを通じて集められた資金は、森林の保全や無償医療・教育の充実、そして地域社会のインフラ整備へと直接還元されている。大衆消費型の観光を退け、真の「エコツーリズム」を突き詰めるこの戦略は、観光のあり方と豊かさの定義そのものを根底から揺さぶる実験なのだ。