家庭料理の現場や食品科学の研究機関において、舞茸がお肉を柔らかくするタンパク質分解酵素の強力なパワーは広く知られています。舞茸には「エンドペプチダーゼ」と呼ばれる強力なプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が極めて豊富に含まれており、これが豚肉の硬さの主因である筋原線維タンパク質(アクトミオシン)や結合組織を素早く分解します。
一般的なキノコ類(シイタケやエリンギなど)と比較しても、舞茸の酵素活性は群を抜いて高く、パイナップルやパパイヤに匹敵する分解力を持っています。これが、豚肉と舞茸の漬け込みで柔らかい理由の核心です。生の舞茸を細かく刻んで豚肉に密着させると、酵素が肉の深部まで浸透し、加熱した際にタンパク質がギュッと縮んで水分を外へ押し出してしまう現象を根本から防ぎます。
さらに見逃せないのが、旨味成分の相乗効果です。豚肉に豊富に含まれる「イノシン酸」と、舞茸に凝縮された「グアニル酸」「グルタミン酸」が口の中で出会うことで、単体で食べる場合の数倍から数十倍もの旨味の広がり(相乗効果)が生み出されます。科学的な裏付けがあるからこそ、この二つの組み合わせは料理界で絶対的な信頼を勝ち得ているのです。