銀座イタリー亭の歩みは、日本の外食文化史そのものと言っても過言ではありません。店舗の公式記録によると、創業は戦後復興期の熱気が色濃く残る1953年(昭和28年)。「ローマの裏町にあるような、ちょっと目立たないけれど、毎日行列ができるイタリア料理のお店を創りたい」という創業者の強い情熱から、銀座の一角にその暖簾が掲げられました。
当時の日本国内では、まだ本格的なイタリア料理はおろか、オリーブオイルやパスタの存在すら一般家庭にはほとんど浸透していませんでした。その時代にあって、本場イタリアの温もりある家庭料理を気取らないスタイルで提供したイタリー亭は、またたく間に文化人、映画関係者、そして銀座を愛するモダニストたちの憧れの的となったのです。
昭和、平成、令和と三つの時代を駆け抜け、2026年で創業73周年を迎えた現在も、赤白のチェック柄クロスや温かみのあるレンガ調の内装が醸し出すアットホームな空気感は健在です。時代に迎合して過度に高級化することなく、「誰もが気兼ねなく美味しいパスタを頬張れる場所」という創業時のアイデンティティを頑なに守り続けていることこそ、世代を超えて愛され続ける第一の礎となっています。