建物の随所に施された意匠は、文化庁の指定する登録有形文化財・伝統建築の基準を体現する貴重な遺産である。年月を経て飴色に輝く柱や、光を柔らかく拡散させる手漉き和紙の障子。過剰な装飾を削ぎ落とし、余白に美を見出すアプローチには、侘び茶の大成者である千利休の精神が色濃く宿る。
低い躙り口(にじりぐち)を思わせるアプローチを通り、座敷へ足を踏み入れると、自然と姿勢が伸びる。視線の先には計算し尽くされた坪庭が広がり、季節ごとの草花が静かに揺れる。ただ座っているだけで、日常の雑音が剥がれ落ちていく感覚を覚えるはずだ。