ネット上の掲示板やSNSでは、日常的に「あの芸能人は実はハーフではないか?」という憶測が飛び交う。日本人離れした彫りの深い顔立ち、エキゾチックな目元、高い鼻梁を持つ著名人が、根拠のない噂によってハーフ認定されるケースは後を絶たない。
代表的な人物が、日本を代表するシンガーソングライターの平井堅である。かつてインド映画の登場人物のような濃密なビジュアルで話題となり、本人自ら「空港の入国審査で外国人レーンに誘導された」「インドの屋台で現地の人から自然にヒンディー語で声をかけられた」といったエピソードを自虐ネタとして披露してきた。しかし、両親ともに純粋な日本人であり、三重県名張市で育った生粋の日本人であることが戸籍・親族取材からも確認されている。
実力派俳優の阿部寛や北村一輝も同様の代表格だ。阿部寛は映画『テルマエ・ロマエ』で古代ローマ人を演じ、現地のイタリア人キャストからも「まったく違和感がない」と絶賛されたが、神奈川県横浜市出身の両親を持つ生粋の日本人である。北村一輝も大阪府出身の日本人であり、海を渡ったバックボーンを持たない。
また、女性タレントではスザンヌが挙げられる。バラエティ番組『クイズ!ヘキサゴンII』全盛期、祖母が「キャサリン」、母親が「キャシー」という愛称で飲食店を営んでいたため「欧米系の血を引いているのではないか」と広く誤認された。だが、本名は山本紗衣(やまもと・さえ)であり、熊本県出身の純日本人である。家族の陽気なキャラクターと芸名が生んだ微笑ましいパブリックイメージの産物だったといえる。
なぜこうした「ハーフ誤認」が頻発するのか。その心理的背景には、日本社会に根強く残る「彫りの深い美男美女=欧米ルーツ」という無意識の短絡思考(認知バイアス)が存在する。だが、縄文系ルーツを色濃く残す南九州や沖縄、東北の一部地域など、日本列島内部の遺伝的多様性だけでも驚くほど立体的な顔立ちが生まれることは、形質人類学のデータでも証明されている事実である。