高級なフルーツを手に入れると、つい「傷まないようにすぐ冷蔵庫の奥へ入れよう」と考えがちです。しかし、びわにおいてはこれが最も風味を損なう原因となります。果樹園の生産者や専門家がびわを冷やしすぎない理由として挙げるのは、極端な「低温障害」と「糖度・香気の減退」です。
びわは温暖な気候を好む亜熱帯原産の果樹であり、冷気に極めて弱い性質を持ちます。5度以下の環境に長時間さらされると、果肉の細胞が破壊されて水分が抜け、スポンジのようなパサついた食感に劣化してしまいます。さらに、びわのデリケートな香り成分であるヘキサナールやリナロールなどの揮発性化合物が揮発しなくなり、持ち味である芳醇な風味が完全にマスキングされてしまいます。
びわの甘味成分は主にショ糖(スクロース)、果糖(フルクトース)、ブドウ糖(グルコース)で構成されています。果糖は冷やすことで甘味が引き立ちますが、びわ本来のまろやかな甘みを感じる至適温度は12℃〜15℃前後とされています。
最も美味しい状態で味わうためのプロ推奨の冷やし方は、「食べる2〜3時間前に野菜室(約8℃)へ入れる」、あるいは「食べる直前に氷水に10分から15分ほど浸す」というアプローチです。常温で保たれていた芳醇なアロマを閉じ込めず、表面のぬるさだけを心地よくリフレッシュさせた状態で食卓へ届けることができます。