京都市南区の上鳥羽地区。歴史ある街の一角に構える積水化学工業京都研究所は、積水化学工業株式会社におけるR&Dの中核組織である先端技術研究所の主要機能を担っている。いまこの場所で何が起きているのか。その答えは、脱炭素社会の実現と産業競争力の両立という、極めて困難な二項対立の解消にある。
研究棟のクリーンルームでは、ナノレベルの分子制御技術を駆使した極薄フィルムや、過酷な環境下でも劣化しない特殊ポリマーの試験が昼夜を問わず繰り返されていた。従来の高機能プラスチックス技術をベースにしながらも、求められる性能基準は従来の数倍に跳ね上がっている。単に軽くて強いだけでなく、自己修復機能を持たせたり、外部刺激に応じて柔軟に性質を変えたりするスマートマテリアルへの進化が加速しているのだ。
環境イノベーションの現場で特筆すべきは、製造プロセスそのものの省エネルギー化だ。原料調達から廃棄・再利用に至るライフサイクル全体でカーボンフットプリントを極限まで削ぎ落とす設計思想が、すべての実験ラインに徹底されている。京都発の基礎研究が、グローバル市場における巨大な事業インパクトへと直結する道筋が、すでに明確に描かれていた。