御池通から一歩南北の筋に入ると、格子戸越しにほのかな灯りが漏れる光景に出会います。烏丸御池の町家居酒屋が圧倒的な人気を誇る最大の理由は、単なるノスタルジーの演出ではなく、坪庭や梁を活かしたプライベート感の創出に長けているからです。奥行きのある鰻の寝床構造を活かし、奥にひっそりと設えられた離れは、大切な人をもてなす烏丸御池のデートディナーにおいて絶大な威力を発揮します。
「うちは看板を出さず、路地の突き当たりでひっそり営業しています。わざわざ探して来てくださる方だけに、その日の朝に仕入れた京野菜とお出汁を味わっていただきたいですから」。現地で長年板場に立つ料理人の言葉通り、烏丸御池の隠れ家和食は過剰な宣伝を行いません。素材を煮含める出汁の香り、炭火でじっくり焼き上げる旬魚の香ばしさといった五感への訴求こそが、リピート率70%を超える名店の根底に流れる哲学です。