事件が起きたのは2006年8月25日午後10時50分頃。現場となった福岡市東区の海の中道大橋は、海風が吹き抜ける直線道路だ。被害者である大上さん一家5人が乗るRV車が制限速度を守って走行していたところへ、背後から猛烈なスピードで今林受刑者の運転する乗用車が追突した。
追突のすさまじいエネルギーにより、大上さん一家の車両は歩道の防護柵をなぎ倒して約15メートル下の博多湾へ転落。漆黒の海中へ沈んでいく車内から、両親は必死の思いで脱出を果たしたものの、後部座席に取り残された長男(当時4歳)、次男(当時3歳)、長女(当時1歳)の幼い3きょうだい全員が溺死するという痛ましすぎる結末を迎えた。
現場を目撃した人々や捜査官を心底震え上がらせたのは、衝突事故そのもの以上に、その直後に今林受刑者が取った異常な自己保身行動だった。
車を海へ突き落としたことを認識していながら、受刑者は110番や救護活動を一切行わず、そのまま数百メートル車を走らせて逃走。車を乗り捨てた後、現場へ戻ることもなく、駆けつけた友人に身代わりを依頼する電話をかけ、さらにアルコール検知を逃れるために「大量の水をガブ飲みする」という前代未聞の隠蔽工作に及んだのだ。
福岡市役所の西部農業土木事務所に勤務する現職公務員が、居酒屋やスナックを何軒もハシゴして泥酔した果てに起こした凶行。法廷の被告人席に現れた今林受刑者はうつむき、時に涙を流しながら謝罪を口にしたものの、一審判決では危険運転致死傷罪の成立要件である「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」の立証が不十分とされ、業務上過失致死傷罪に留まる懲役7年6月の判決が言い渡された。法廷内に遺族の絶叫と怒号が響き渡った瞬間だった。
この理不尽な判断に対し、福岡高裁は「被告は飲酒の影響で前方を注視することが著しく困難な状態に陥っていた」と認定し、危険運転致死傷罪を適用。上限となる懲役20年の判決を言い渡した。最高裁もこの判断を完全に支持し、「アルコールの影響で正常な運転ができない恐れを認識しながら運転を強行した悪質性は極めて高い」とする判決理由を残して確定させた。