ボケを語る上で避けて通れないのが、日本史最大の革命児・織田信長である。信長が自身のシンボルとして愛用した木瓜紋(家紋)は、まさにこの植物の姿を意匠化したものと伝えられてきた。
古来、木瓜紋は鳥の巣の中に卵がある様子を図案化したものとも言われ、子孫繁栄を祈願する瑞祥として重宝された。だが、戦乱の世を駆け抜けた信長が惹かれたのは、単なる穏やかな繁栄祈願だけではなかったはずだ。厳冬を切り裂いてどの花よりも先に咲き誇るその瞬発力と、幾多の枝を張り巡らせて強固な生垣を形成するタフネス。既存の秩序を壊し、誰も見たことのない国家像を構想した信長の精神性は、まさに「先駆者」としての植物の性質と見事なまでに共鳴している。
天下布武を掲げた覇王の胸中にあったのは、厳しい冬のあとに必ず圧倒的な春を自らの手で手繰り寄せるという、徹底したプラグマティズムだったに違いない。