市街地やその周辺に出没するヒグマは「アーバンベア(都市型ヒグマ)」と呼ばれ、従来型の野生個体とは異なる行動パターンを見せます。人間社会のインフラを巧みに利用し、夜間の暗がりだけでなく白昼堂々と道路を横断する事例も報告されています。
かつて道東の標茶町や厚岸町で60頭以上の乳牛を襲撃し、世間を震撼させたコードネーム「OSO18(オソジュウハチ)」の被害経緯は、警戒心の極めて高い個体がいかに長期間にわたり防除網をすり抜けるかを証明しました。最終的に駆除されたものの、スマート化したヒグマに対する捕獲の難しさを浮き彫りにしました。
一方で、駆除を担う現場のハンター(北海道猟友会)を取り巻く環境は危機的です。主な課題として以下の3点が挙げられます。
- ハンターの高齢化と担い手不足:道内猟友会メンバーの平均年齢は60代後半を超えており、後継者育成が追いついていません。
- 市街地での銃器使用規制:鳥獣保護法および銃刀法の制約により、人家のある市街地では跳弾事故のリスクから発砲が極めて制限されます。
- 発砲に伴う法的リスクと処遇問題:過去に警察官の立ち会いのもとで駆除発砲したハンターが銃所持許可を取り消される訴訟が発生するなど、現場に過度な責任が押し付けられる構造が続いています。
現場取材において現役猟師は「危険手当や法的な身分保障が不十分なまま、危険な市街地駆除をボランティア同然で引き受けるのには限界がある」と苦渋の表情で語っています。行政による組織的な専任捕獲チームの整備や法改正が急務となっています。