連続墜落事故を引き起こした主犯、それが操縦特性付加システム (MCAS)だ。燃費効率を向上させるために大型エンジンを搭載した737 MAXは、従来の737に比べて飛行中に機首が上がりやすい特性を持っていた。失速を防ぐために開発されたMCASは、機首が危険な角度に達したと判断すると、自動で水平尾翼を動かして機首を押し下げる。
問題は、この強力な自動制御が「わずか1基の迎角センサー」のデータに依存していた点にある。センサーに異常や誤作動があれば、巡航速度で飛行中であってもシステムは即座に誤作動を起こし、機首を地面に向けて無理やりねじ伏せようとする。パイロットが操縦桿を引いても、MCASは数秒おきに再び機首下げ命令を繰り返し上書きした。まさに機体自身がパイロットの手を振りほどいて墜落へと突進する悪夢のような設計だった。
さらに恐るべきは、ボーイングがこのシステムの存在をマニュアルから意図的に削除していたことだ。運航会社やパイロットにはMCASの作動ロジックすら知らされておらず、シミュレーターによる追加訓練も「不要」と処理されていた。移行訓練のコストを抑え、機体を売り込みやすくするための露骨なマーケティング戦略が優先された結果である。