『今際の国のアリス』において、トランプのスート(絵柄)はゲームの性質を明確に分類しています。肉体戦の「スペード」、チーム戦やバランスの「クラブ」、頭脳戦・論理思考の「ダイヤ」、そして人の心を弄び、仲間の裏切りを誘発する最悪の絵柄が「ハート」です。
ファーストステージにおける「ハートの7(かくれんぼ)」では、主人公アリスの親友であるチョータとカルベが命を落とし、読者にトラウマ級の絶望を植え付けました。さらに「ハートの10(魔女狩り)」ではビーチの集団心理が暴走し、無差別な虐殺劇へと発展しています。
数字が上がるほど難易度と心理的ダメージが跳ね上がるハートにおいて、最高位である「キング(K)」がどのようなゲームであったのか。原作漫画およびNetflixドラマ版の双方において、アリスが直接対決した絵札はクラブのキング(久間)、スペードのキング(椎名)、ダイヤのキング(九頭竜)、そしてラスボスであるハートのクイーン(加納未来)でした。
つまり、ハートのキングはアリス以外の「別の滞在者たち」によって人知れず攻略・クリアされたという設定になっています。作者の麻生羽呂氏がこのゲームをあえて詳細に描かなかった背景には、「読者の想像力に委ねることで、ハートというジャンルの底知れない狂気と絶望感を極限まで高める」という高度な作劇上の意図が存在すると分析されています。