ネット上の考察コミュニティやSNSでしばしば見られる誤解の一つに、「ケンシロウは最初から最強の天才だった」という言説があります。しかし、公式資料や原作者の対談でも強調されている通り、幼少期のケンシロウは泣き虫で、兄たちの背中を追う平凡な少年に過ぎませんでした。彼が歴代最強の伝承者へと至ったのは、シン、レイ、シュウ、そしてラオウといった強敵たちの死と哀しみを、自らの拳「無想転生」へと昇華させ続けたからです。
また、前日譚にあたる『蒼天の拳』との関係性についても誤認が少なくありません。『蒼天の拳』の主人公・霞拳志郎は、第62代北斗神拳伝承者であり、ケンシロウの師父であるリュウケン(本名:霞羅門)の異母兄にあたります。つまり、霞拳志郎はケンシロウにとって「師匠の実兄」という立ち位置です。さらに言えば、ケンシロウの名前は、この偉大な先代伝承者「霞拳志郎」の武名にあやかってリュウケンが名付けたという裏設定が存在します。
北斗神拳の千八百年にわたる歴史は、常に「誰が正統か」「誰が真の愛を知るか」という問答の連続でした。『蒼天の拳』から『北斗の拳』本編、そして修羅の国へと一本の線で結ばれることで、登場人物たちの血縁と因縁は、壮大な大河ドラマとしての厚みを獲得しているのです。