油屋の最上階にある湯婆婆の豪奢な執務室で、ゴロゴロと床を転がり、時には3段に積み重なって千尋を威嚇する緑色のおじさん顔。あのキャラクターの公式名称は「頭(かしら)」です。スタジオジブリの公式キャラクター設定資料集や絵コンテにおいても、明確に「頭」と表記されています。
胴体や手足は一切存在せず、髭面で頭髪が薄い中年男性の頭部だけで構成されており、自らの髭や顎の弾力を利用して跳ねたり、転がったりして移動します。自我の有無は判然としませんが、湯婆婆の命令には従順であり、部屋の用心棒やマスコット、あるいは書類の重石や雑用係のような役割を担っています。
声優は若き日の戸次重幸|「オイ」の唸り声に込められた怪演
「頭」が発する印象的な「オイ、オイ」という低音の唸り声。実はこの声を演じているのは、人気演劇ユニット「TEAM NACS」のメンバーであり、現在も映画やドラマで第一線で活躍する俳優の戸次重幸(出演当時は本名の佐藤重幸)です。
本作には、同じくTEAM NACSの大泉洋が「番台蛙」役、安田顕が「おしら様」や油屋の男衆役などで参加しており、北海道のローカル番組から全国区へと羽ばたく過渡期の貴重なキャスティングとしてファンの間でも語り草となっています。台詞と呼べる明確な言語を持たないキャラクターでありながら、不穏さと滑稽さが同居する独特の音響表現は、綿密なアフレコ収録によって生み出されました。