ぎっくり腰を指す比喩表現として広く知られる「魔女の一撃」。この言葉の発祥はドイツ語の「Hexenschuss(ヘクセンシュス)」です。「Hexe(魔女)」と「Schuss(射撃・一撃・銃撃)」が組み合わさった言葉で、中世ヨーロッパの民間伝承に深く根ざしています。
当時の医学水準では、外傷もないのに突如として人が腰を抱えて倒れ込み、激痛で立てなくなる現象を合理的に説明できませんでした。そのため人々は、「姿の見えない魔女が空から悪意の矢を放ち、腰を射抜いた」「魔女の呪いを受けた」と信じ込んだのです。この表現はドイツにとどまらず、イタリア語の「colpo della strega」、フランス語の「tour de rein(腰の捻転、俗称として魔女の悪戯)」など、欧州全域に同様の伝承が残されています。
日本においては、昭和から平成にかけて西洋医学や民俗学の文献が紹介される過程で「魔女の一撃」という直訳が定着しました。何の前触れもなく襲いかかる破壊的な激痛の衝撃度を、これ以上なく的確に言い表した表現として現在も使われ続けています。