影文字や袋文字といった装飾文字は、決して現代のデジタルツールの産物ではない。そのルーツを辿ると、看板建築や活版印刷時代にまで遡るタイポグラフィの伝統的な視覚的知恵に突き当たる。文字に影をつける目的は、もともと平面上の文字を立体的に認識させ、周囲の情報から即座に差別化するためであった。
日本の文字デザイン界を牽引する株式会社モリサワをはじめとするフォントメーカーや、タイプディレクターとして著名な鈴木功氏らの仕事を見ても、文字の骨格と空間の対比がいかに視認性を大きく左右するかが分かる。「ひらがな」特有のやわらかなカーブにどのように幾何学的な影を落とすかという問題は、現代のデザイナーにとっても極めて刺激的な課題なのだ。