大手商社の投資案件、あるいは国境をまたぐM&A。契約書の条項一つが数十億円の損失を防ぎ、あるいは巨額のリスクを誘発する。この冷徹な現場に送り込まれるのが法学部出身者たちだ。リスクの所在を嗅ぎ分け、論理の破綻を突く彼らの嗅覚は、不透明さを増すグローバル市場において極めて高価な武器として扱われている。
なかでも伝統的な受け皿である金融業の採用熱は衰えるどころか、さらに先鋭化している。フィンテックの台頭や暗号資産をめぐる法整備、金融商品取引法の度重なる改正など、コンプライアンス(法令順守)と攻めのビジネスモデル構築を両立できる人材の価値は青天井だ。メガバンクや大手証券会社が、経済学部生以上に法学部生の論理構築力に白羽の矢を立てる構図が定着した。
さらに近年、凄まじい勢いで法学部生を吸い上げているのがメガベンチャーをはじめとするIT業界だ。個人情報保護、越境データ移転、生成AIの知的財産権問題。これらはすべて、既存の判例や法律が追いついていない「グレーゾーン」のフロンティアである。ここで法務担当として事業部門と伴走し、法規制の網をかいくぐるのではなく「新たなルールを自らデザインする」役割を担う。法学部生が目指すキャリアの輪郭は、かつてないほどダイナミックに広がっている。