無料版を使い倒す上で、あらかじめ把握しておくべき「機能制限のリアル」についても掘り下げる必要があります。実際の制作現場において、無料版と有料版(プレミアム会員)でクリエイターが直面する壁は、単なる広告の有無にとどまりません。
まず、基本描画において不都合を感じるケースは極めて稀です。レイヤーの乗算やスクリーンといった合成モード、手ブレ補正機能、クリッピング、マンガのコマ割り機能などは、すべて無料版でも無制限に動作します。解像度の高いイラストを描く場合でも、端末のメモリ(RAM)許容量に依存するだけであり、アプリ側が意図的に無料版のキャンバスサイズを小さく制限することはありません。
一方で、無料版では明確に「使えない」機能も存在します。それがプレミアム会員向けに提供されている専門機能群です。
- トーンカーブや色階調の高度な補正フィルター:仕上げ処理で重宝するプロ向け色調補正ツールの一部は有料会員限定です。
- ベクターツールの制限解除:線を引いた後に太さや曲がり具合を自在に微調整できる機能は、プレミアムプランの特権となっています。
- クラウドストレージ容量:無料版の作品保存容量(アイビスクラウド)は小容量に制限されており、大容量のバックアップにはプレミアム登録(20GB)が求められます。
- キャンバスの用紙テクスチャや専用プレミアム素材:イラストの質感をリッチにする高品質な背景・テクスチャの一部が制限されます。
また、利用するデバイスによっても無料版の扱いが異なる点には注意が必要です。iPad版のアイビスペイントXはスマートフォン版と同様に完全無料で利用でき、Apple Pencilの筆圧感知にも初期状態で完璧に対応しています。しかし、Windows PC版の無料版には「1日1時間」という厳しい利用時間制限が課されています。タイマーが切れると描画ができなくなるため、PCで腰を据えて作業したい場合は、実質的に買い切りプロ版の導入が前提となります。