フライパンへ肉を投入する前の段階で、仕上がりの7割が決まります。冷蔵庫から取り出してすぐに熱いフライパンへ置くと、表面だけが急激に収縮して内部は冷たいままという典型的な失敗に陥ります。内部温度とフライパンの温度差を縮めるため、ステーキを常温に戻す時間は夏場で約30分、冬場なら1時間程度を目安に設定するのが鉄則です。中心温度を15〜20度前後まで引き上げることで、均一に火が通る土台が整います。
あわせて欠かせないのが丁寧な下処理です。赤身と脂身の境目にある白い筋組織は加熱によって強く縮み、肉全体を反り返らせて熱ムラを作る原因になります。包丁の刃先を垂直に立て、境目に沿って1〜2センチ間隔で切り込みを入れるステーキ肉の筋切り方法を施すだけで、肉がフライパンにぴったり密着し、美しい焼き色がつきます。
下味をつけるステーキの塩コショウのタイミングにも科学的な根拠が存在します。塩を振ってから放置すると浸透圧によって内部の水分が外へ抜け出し、旨味成分まで失われてしまいます。塩コショウは必ず「フライパンに入れる直前」に振るのが基本。肉の重量に対して0.8〜1.0%前後の塩をやや高めの位置から均一に落とすことで、表面をコーティングしながら最適な塩気を行き渡らせることができます。