再始動の舞台として選ばれたのは、テネシー・ウィリアムズの不朽の名作『欲望という名の電車』だった。演じたのは、脆くも崩れ去っていく元南部貴族の令嬢、ブランチ・デュボア。狂気とプライド、そして愛への渇望が交錯するこの難役に、彼女は文字通り魂を削って対峙した。
幕が上がった瞬間の緊張感は異常だった。だが、初日の舞台を観た演劇関係者は一様に言葉を失ったという。繊細な息遣いから魂の絶叫に至るまで、生の舞台演劇だからこそ露わになる剥き出しのパッション。そこには、過去のスキャンダルを言い訳にしない、覚悟を決めた一人の女優の凄みだけが存在していた。
連日満席となった劇場には、往年のファンのみならず、厳しい批評眼を持つカルチャー層も殺到した。スタンディングオベーションが鳴り止まないカーテンコール。沢尻エリカという表現者が、本物の実力によって自らの居場所を再び奪還した決定的な瞬間だった。