殻付きのつぶ貝を扱う上で、第一に理解しなければならないのがつぶ貝の食中毒の危険性です。厚生労働省や各自治体の保健所が毎年注意喚起を行っている通り、エゾバイ科の大型巻貝(真つぶ、青つぶなど)の唾液腺にはテトラミン(Tetramine)という毒素が高濃度に含まれています。
この唾液腺は市場や浜の現場で「アブラ」と総称されており、黄色から淡いクリーム色をした左右一対の塊です。テトラミンは耐熱性が極めて高く、「煮沸や熱湯消毒をしても毒性は一切消えない」という極めて厄介な性質を持っています。そのため、刺身で生食する場合はもちろん、煮付けや壺焼きにする場合であっても、調理の段階で完全に摘出して廃棄しなければなりません。
万が一、アブラを取り除かずに摂取した場合、食後30分から2時間程度で以下のような急性中毒症状が現れます。
- 視覚異常:視界がかすむ、物が二重に見える(複視)、目の奥の圧迫感
- 神経症状・酩酊感:激しいめまい、足元のふらつき、お酒に激しく酔ったような浮遊感
- 激しい頭痛:後頭部から側頭部にかけて締め付けられるような激痛
- 消化器症状:吐き気、嘔吐、腹痛(重症例では血圧降下や脱力感)
通常は数時間から半日程度で自然回復し、死亡に至る例は稀とされていますが、高齢者や体調不良時には重症化するリスクがあります。また、魚類に寄生するアニサキスのような寄生虫の危険に関しては、つぶ貝などの海産巻貝では発症事例が極めて限定的であるものの、消化管内の雑菌や付着物による細菌性腸炎を防ぐ観点からも、念入りな洗浄と内臓処理が不可欠です。