昆虫少年少女から大人の自然愛好家まで、セミを捕獲した際に「額にゴミがついている」「ダニや寄生虫ではないか」と勘違いするケースが後を絶ちません。SNS上でも夏になると「セミの顔に赤いLEDみたいな粒がある」「宝石がついている」といった投稿が毎年のように拡散されます。しかし、これらは寄生虫でも病変でもなく、生まれつき備わっている正規の感覚器官(背単眼)です。
セミの頭部を上から見下ろすと、正三角形あるいは逆三角形を描くように、極小の赤い球体が3つ配置されています。中央に1つ、そのやや後方の左右に2つという配置パターンは、アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシなど、日本国内に生息する主要なセミのほぼすべてに共通する形態的特徴です。
この器官が赤く見える背景には、網膜組織を保護し、特定の光波長を効率よく取り込むためのスクリーニング色素(主にオモクロム系色素)が凝縮されているという生理学的理由があります。太陽光や外光が当たると内部の色素層が光を反射し、ルビーのように深紅の光を放つのです。つまり、セミは頭部の両脇で周囲の風景を広角に捉えつつ、額の3つの光センサーで頭上の天空を常に監視しています。