「足の指の間がジュクジュクして皮が剥け、強いかゆみがある」という典型的な皮膚トラブルにおいて、医療現場では薬剤の誤用による深刻な悪化例が頻発しています。その主たる原因が、白癬菌と黄色ブドウ球菌の見分けがつかないまま行われる自己処置です。
水虫の正体は、皮膚の角質層を構成するケラチンを栄養源として繁殖する「白癬菌(はくせんきん)」という真菌(カビ)です。一方で、皮膚が擦れて化膿したり、ジュクジュクとした黄色い浸出液が出て「とびひ」などを引き起こす主な病原体は「黄色ブドウ球菌」という細菌です。
皮膚科の臨床現場では、白癬菌による水虫であるにもかかわらず、「傷口が化膿した」「早く治したい」と焦るあまり、過去に処方されたステロイド外用薬や細菌用の化膿止め(抗生物質軟膏)を塗り込んでしまう患者の事例が後を絶ちません。ステロイドは局所の免疫を低下させるため、白癬菌が爆発的に増殖し、病変が異常に広がって皮膚科医でも肉眼診断が困難になる「インコグニート(変貌した白癬)」を引き起こします。
また、家庭内で「市販の抗菌ハンドソープや除菌スプレーを足に吹き付けていれば水虫は予防できる」と信じているケースも見受けられます。しかし、市販の除菌剤の多くは細菌の細胞膜やエンベロープを持つウイルスを対象としており、強固なキチン質の細胞壁と硬い角質に潜む白癬菌を退治することはできません。正しい診断を受けずに見当違いの薬を塗り続けることは、治癒を遅らせるだけでなく、角質層を破壊して重篤な二次感染を招く引き金となります。