メディアやインターネット上のイメージによって定着してしまったステレオタイプの中に、「乾燥帯・砂漠=一年中いつでも暑い場所」という根強い誤解があります。これは地理学の視点から見ると決定的な誤りです。
ケッペンの定義において、乾燥帯は気温の高低ではなく「水分の収支(降水量と蒸発量)」のみで規定されます。そのため、高緯度や標高の高い内陸部に位置する乾燥地帯は、冬になると猛烈な極寒に見舞われます。代表格が、中国北部からモンゴルにかけて広がるゴビ砂漠やタクラマカン砂漠です。これらの地域は「寒冷砂漠」と呼ばれ、夏場は40℃近くまで気温が上がる一方で、冬期はシベリア高気圧の影響をもろに受け、マイナス30℃から40℃近くまで冷え込みます。
また、「砂漠は一面の美しい砂丘が広がっている」というイメージも全体のわずか2割程度に過ぎません。実際の砂漠の大半(約8割)は、強風によって細かい砂が吹き飛ばされ、ゴツゴツとした岩や砂利が地表を埋め尽くす「岩石砂漠(ハマダ)」や「礫砂漠(レグ)」です。サラサラとした砂丘(砂砂漠)は映画や観光写真で好んで取り上げられますが、過酷な現実の地表景観はもっと無骨で無機質な岩石の世界なのです。