聴覚障害者と接する際、多くの人が良かれと思って陥る代表的な誤解がいくつか存在します。正しい知識を持つことは、不毛なすれ違いを防ぐための第一歩です。
誤解1:文字で書けば(筆談なら)100%意図が伝わる
中途失聴者や難聴者にとって筆談は極めて有効ですが、幼少期から日本手話を母語として育ったろう者にとって、書かれた日本語は「第二言語(外国語)」に近い感覚である場合があります。日本語の助詞(て・に・を・は)のニュアンスや長文の抽象的な表現は、手話話者にとって認知的負荷が高いケースがあります。筆談を行う際は、主語と述語を明確にし、箇条書きや簡潔な表現を心がける配慮が必要です。
誤解2:手話は世界共通の国際言語である
手話は世界共通ではありません。国や地域ごとに独自の語彙と文法が存在します。アメリカ手話(ASL)、イギリス手話(BSL)、韓国手話(KSL)など、それぞれ言語体系が異なり、日本語と英語が通じないのと同様に、日本手話と他国の手話もそのままでは通じません。なお、国際会議や国際大会では「国際手話(International Sign)」と呼ばれる共通規格の手話が補助的に使われます。
誤解3:補聴器や人工内耳をつければ健聴者と同じように聞こえる
補聴器は単に周囲の音をマイクで集めて大きくする機器であり、人工内耳は側頭部に埋め込んだ電極から聴神経へ直接電気信号を送る装置です。どちらも「機械を介した音」であり、健聴者が生身の耳で聞くクリアな音とは質感が全く異なります。特に周囲が騒がしい場所では雑音ばかりが増幅され、会話音を抽出して聞き取るには極めて高度な集中力と精神的疲労を伴います。